■第194回シネマエッグ推薦作 『スパイの妻』を観て  ★★★★ VERY GOOD

観終わって素晴らしいと思える「銀獅子賞」授賞に相応しい「ドレミファ娘の血は騒ぐ」等のミニシアターの名匠、黒沢清監督の集大成的作品。

此の物語は、行成薫・著によるNHKドラマの原作「スパイの妻」の劇場版です。昨年の有村架純のNHKドラマ「そして生きる」劇場版と同じく、

テレビ版の黒沢清監督が劇場版に再編集し直した最近はやりのいわゆるディレクターズカット版。コッポラの「アウトサイダー」も近年、

ディレクターズカット版が製作されました。「アウトサイダー　コンプリート・ノベル版」★★★★★の感動作。

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此の「スパイの妻　劇場版」は、緊張感と、場所から場所への移動感覚等に素晴らしく、その空気感と感情の場面の繋ぎ方に優れています。

それでいて穏やかな展開で、軍服の社会と、スーツやドレスの洋服の社会と、2面性が判り易く描かれています。

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物語は中国の満洲地方を日本が統治していた時代の神戸の港の物語。もう直ぐ米国に戦争を仕掛けようとしていた頃から終戦迄が描かれます。

布や海外物資を輸入する貿易商社の社長とその会社員たち、そしてスパイの妻。先ずは取引先のイギリス人が拷問に遭う。彼を救う。

次第に国土主義が色濃く成り、検閲や尾行が横行し始まる。戦争前の自由な時間は僅かだ。社長は、満洲、上海、米国に行きたいと妻に言う。

最初の訪問先の満洲からの帰国後、社長と連れの者達が、様子が変化してゆく。旅先で目撃した「非人間的事案」が彼らを売国土人物へと変えて

行くのだった。その内容とは....。

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心を揺さぶる「安心・安定生活」を常に願うハイソサエティな家庭の妻。その古い知り合いの軍部の若き司令塔。そして社長と謎の女の死体。

誰が殺したのか。夫婦の愛は揺らいで行く。美しく微笑む妻聡子のモノクローム映像に当時の流行歌。些細な気配。スリリングな映像美に酔いしれて

下さい。ラストの場面は戦火で開かずの扉が解放されます。「さあ、皆んな出て、さあ」と。行き別れたあの方の事は今は何も知れない。

スパイの妻にされたヒロイン聡子の言葉「今の此の国では私は異常者呼ばわり」。「これでこの国は負けるわ」。

ラストシーンはフェリーニ監督の映像の様である。とても美しくて心地良いのだ。素晴らしい締めくくりである。

■第---回シネマエッグ推薦作　００７／ノー・タイム・トゥ・ダイ　２０２ １年 ４月　　日（金）〜 (〜2020.11月から延期と成りました〜 2020.10.6 new)

原題:"NO TIME TO DIE" (「 「(愛し合って後の)　死する時」なんて迎えられない」)

監督・脚本　カーリィ・ジョージ・フクナガ　　脚本　ニール・パーヴィス、ロヴァート・ワダ、スコット・Z・バーンズ、フィーヴ・ウォーラーブリッジ

　　原作　イアン・フレミング　　音楽　ハンス・ジマー　主題歌　ビリー・アイリッシュ　主演・ダニエル・クレイグ、アナ・ド・アーマス